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Japanische Klassiker mit Furigana

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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.743 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

代々質素だいいちの家風で、家計はゆたかであったし、召使の数もおおく、やす女はただ主婦という位置にすわっているだけでよかった、なんの苦労もなく心配もないはずだった。藤右衛門はそう思っていたし、事実また彼の眼にうつる妻の姿は、いつまでもとついで来たときとおなじのびやかさ、明るくおっとりして、千石の老職の妻というおちついたかんじでしかなかったのである。あのひどく荒れた手に触れたとき、藤右衛門はまったく意外だった、皮膚の荒れたその手と、彼の印象にある妻とはどうしても似あわず、自分のまったく知らなかった一面にはじめて触れたような気持だった。

「これほどのことに、どうして気がつかなかったのであろう」

格之助が去ってからも、茫然と自分の手をみまもっていた藤右衛門は、ふとそう呟きながら面をあげた。

三十年もひとつ家の内に起き伏しして、二人の子まで生した夫婦でありながら妻の本当のすがたというものを知らずにすごして来たことが、はじめていま彼にわかった。千石の家の夫人として、なんの苦労もなく、のびやかにくらしているとばかり思っていたが、それは妻のすがたのほんの一部分でしかなかったのだ。