Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.743 Zeichen · 22 Bildschirme
彼の心にあった空虚なかんじはいつかぬぐい去られたように消えて、その代りに新らしい感動がおおきく脈を搏ちだした。……藤右衛門は立って居間を出た、松田吉十郎がついて来て、書斎に灯をいれて去った。
藤右衛門は机の前にすわった。そこには彼が校閲しかけている稿本が置いてある。藤右衛門はその表紙の「松の花」という題簽をあらためて見なおした、松の緑はかわらぬ操の色だ、そこに撰まれたのはあらゆる苦難とたたかった女性たちの記録である、いまの世にひろめ、のちの世に伝えて、人の心をふるいたたしめる烈女節婦の伝記だ。
「けれども……」
藤右衛門は低く呟きだした。
「烈女節婦はこのように伝記に撰せられるものだけではない、世の苦難をたたかいぬいたこれらの婦人は頌むべきだ。しかし世間にはもっとおおくの頌むべき婦人たちがいる、その人々は誰にも知られず、それとかたちに遺ることもしないが、柱を支える土台石のように、いつも蔭にかくれて終ることのない努力に生涯をささげている。……これらの婦人たちは世にあらわれず、伝記として遺ることもないが、いつの時代にもそれを支える土台石となっているのだ。