Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.547 Zeichen · 23 Bildschirme
二
忠善はぐっと唇をひきむすび、なにか思案をしていたようすだったが、
「これは家来どもには知らせたくないと思う、さいわいこの月末は参覲のおいとまに当るから、日を早めて頂き、自分で帰国してすぐとり糺すとしよう、それまで御前をたのむ」
「承知つかまつりました、できるだけ早く吟味のしだいお知らせねがいます」
念を押して丹後守は帰った。けんもつ忠善はじっとながいこと矢筈のきわの小さな文字をみつめていた。
これは万治二年(一六五九)十月なかばのことである。話はここで十八年まえ、すなわち寛永十八年(一六四一)にかえる、ところは駿河のくに田中城下、新秋の風ふきそめる八月のある日の午後のことであった。
二
その時みよは縁側から庭の柿をみていた。まだ若木のきざはしで、今年はじめて五つほど実をつけたが、雨や風のために落ちてもう二つしか残っていない、それも熟すまで枝についているかどうかわからないけれど、いまはまだ葉簇のあいだに、つやつやとした堅そうな光をみえかくれさせている。初生りの柿を青竹で作った小さな籠にいれ、子供に背負わせると息災にそだつという俗習がある、みよは青柿をながめながらそれを空想した。