Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.547 Zeichen · 23 Bildschirme
二歳の誕生を迎える安之助が、柿をいれた青竹の小さな籠を背にして、よちよちとあるく姿は考えるだけでも愛らしくたのしいものだった。――どうか一つでもよいから残って呉れるとよい。若い母親には酔うほどの空想だった。そこへ家士の足守忠七郎がはせ入って来た、旅支度のままで脇の折戸からいきなり庭へ駆けこんで来たのである。埃まみれの髪、痩せて落ちくぼんだ頬、血の気のない顫える唇、それはひと眼で悪い出来事を直感させるものだった。
「御挨拶はごめん蒙ります」
かれは庭さきに膝をおろして云った、
「旦那さまには、久能山にて御生害にございます」
あまりに突然すぎたし、またあまりに思いがけない言葉だった、みよはわれ知らず「えっ」ときき返しそうにしてようやく自分を抑え、膝の上に置いた手にぐっと力をいれた、鼓動が胸膈をつきやぶりそうに思えた。忠七郎は乾いた唇をうちふるわせながら続けた。
「まちがいのもとは些細なことでございましたが、賀川弥左衛門さまが云いつのり、ついに抜き合わせて、旦那さまにはみごとに賀川さまをお仕止めなさいました。見ていた者も旦那さまに非分はない、賀川さまが悪いと申し合っておりましたが、旦那さまは勤役ちゅうの不始末を申しわけなしと思召し、結末のことを詳しく目付役へお書き遺しのうえ、その夜半、宿所にて御切腹にございました」