Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.678 Zeichen · 17 Bildschirme
金包みを握ったままうなだれている青年は、いきなりよろめくように道の上へ坐った、そして腕で顔を掩って泣きだした。幸子は手を伸ばしかけて止めた、……ほど近い尾花川の瀬音が、冰るようにさむざむと夜気をふるわせている、くいしばった歯の間から、切々ともれる青年の慟哭のこえが、その瀬音に和していたましく耳にしみついた。
「云ってあげたいこともありますし、うかがいたいこともあります」幸子はやがてしずかにそう云った、「けれどそれはこんどお眼にかかるときにしましょう。あなたはきっと御国のために役だつりっぱな武士におなりなさる、わたしはそう信じていますよ、……今夜の、その涙をお忘れにならないで、ようございますね」
それだけ云うと、噎びあげている青年をあとに幸子はそっと踵を返した。
家へ帰って門をはいると、前庭のところに誰か立っていた。暗いのでぎょっとしたが、すぐに良人だということがわかった。
「どこへいった」太宰は低いこえで訊いた、「鹿島を追っていったのか」
「はい、……」
「金を持たせてやったのだな」
幸子はもういちどはいと云って俯向いた、太宰は「あとで話がある」そう云い残して、さっさと家の中へはいっていった。