Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
そうしゅん
早春
豊島 与志雄
Lesen Sie 早春 (そうしゅん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.457 Zeichen · 20 Bildschirme
――その遠い低いところ、草原のはてに、一つぽつりと、黒いものが見えた。何だろうかと、娘はそれを見つめた。黒い一点は、動いていた。だんだんこちらに近づいてくるらしい。たいへんな速さで、こちらへやってくるらしい。次第に大きくなった。馬だった。人が乗っていた。馬も人も黒く見えた。それが、たいへんな勢いで、たいへんな速さで、草原を駆け登ってきた。ますます近づいてくる。ますます大きくなる。下方の谷間を流るる川や、そのあたりの畑地や、杉の木立など、パノラマのような美しい背景のなかに、人馬が大きく浮きだして、それが草原をいっさんに駆け登ってくる。五百メートル、三百メートル……あ、もうすぐ目近に来た。怪物のように大きくなった。それがまっ黒で、機関車のように突進して来た。ぶっつかった……と思ったとたんに、娘は地面に倒れたが、馬はまるで影か霧のように、すーっと通りすぎていった。
こんな話、おれには何のことかよく分らなかった。お伽話でもないし、お化け話でもないし、いささかばからしくも思えた。北川さんもその当座、おれの批評など求めはしなかった。――それが、実は、病人の頭から醸し出されたものだったんだ。