Japanische Klassiker mit Furigana
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そうしゅん
早春
豊島 与志雄
Lesen Sie 早春 (そうしゅん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.457 Zeichen · 20 Bildschirme
北川さんはまだ独身で、家庭には、年とった母と若い妹がいた。病人というのは妹のことで、その姿をおれが見たのは事件が起ってからのことだ。
おれはただ生魚を時々持っていった。おれは魚屋じゃない。戦災で親たちが田舎へ引き込んだあと、一人東京に残って、まあ謂わば植木屋の手伝いみたいなことをしていた。忙しい仕事もめったにないし、あちこちに手蔓があるものだから、物品の仲立ちも少しはやった。大人でなくて小僧っ子なもんだから、却って便利がられた。けちな仕事だが、金は相当にもうかった。
ところで北川さん……はっきり言えば北川辰治は、ちょっと文学者めいたところのある人だが、それでいて少しも気むずかしくはなく、至極のんびりしていた。どうして中学校の先生なんかしているのか分らなかったが、外になにもすることがなかったからだろう。貧乏なのか金持ちなのか見当がつかなかった。十円札一枚もないこともあれば、新らしい百円札をたくさん持ってることもあった。
おれが識り合ったのは一月の半ばで、それからずっと寒い日が続いた。梅の花の咲くのが後れた。そして三月になった或る日のこと、へんなことが起った。