Japanische Klassiker mit Furigana
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こんちゅうず
昆虫図
久生 十蘭
Lesen Sie 昆虫図 (こんちゅうず) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.772 Zeichen · 4 Bildschirme
て、細君の郷里の、船饅頭という船頭相手の売笑婦の生活を、卑しい口調で話しだした。
十日ほどののち、いつものようにブラリとやって行くと、団六は畳のうえにひっくりかえって、しきりに手で顔をあおぐような真似をしている。青木が入って来たのを見ると、
「てへ、こりゃ、どうです。どだいひどい蠅で、仕事もなにも出来やしねえ。人間も、馬のように尻尾があると助かるがな」
といって、妙なふうに尻を振って見せた。
なるほど、ひどい蠅だ。
壁の上にも硝子天井にも、小指の頭ほどもある大きな銀蠅がベタいちめんにはりついていて、なにか物音がするたびに、ワーンとすさまじい翅音をたてて飛び立つのだった。どこからこんなに蠅が来たのだろう。季節は、もう十一月だし、すぐ地続きの青木のアトリエには、蠅などは一匹もいなかった。
「天井裏で、鼠でも死んでるんじゃないか」
というと、団六は、
「ああ、そうか。そんな事かも知れねえな」
と、呟きながら、キョロリと天井を見上げた。
一週間ほどしてから、また出かけて行くと、アトリエの周りには、乳剤のむせっかえるような辛辣な匂いが立ちこめていた。
蠅は一匹もいなかった。