Japanische Klassiker mit Furigana
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はるのまぼろし
春の幻
豊島 与志雄
Lesen Sie 春の幻 (はるのまぼろし) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.888 Zeichen · 6 Bildschirme
そういう自然に取巻かれて、蜜蜂の羽音のする物影に、二人の男が若草の上に寝そべっている。その一人は上気した艶やかな頬を輝かして、薄ら日の光を微笑の眼で迎えながら、独語の調子で語り続ける。
――だって、どうにも仕方がないのだ。僕の魂は風船玉のようなんだ。一つ処に繋いでおいたら、空気がぬけてしぼんでしまうばかりだから、風のまにまにとばしておくのさ。何か一つを選べって? 選べるくらいなら、こんなに彷徨し続けやしない。僕の眼には凡ての女性が、同じくらいに、そして別々の色合で、みな美しいのだ。昼間の倦い明るみの中に居ると、僕の心はあの娘の処へ飛んでいく。娘の小ちゃな魂を、ぎゅーと掌の中に握りしめて、空高く放り上げてやろうか、地面の上に踏みつぶしてやろうか、それとも胸にやさしく抱いてやろうか、何れともきめかねて、惑わしい思いのうちに時間が過ぎる。その躊躇の間が楽しいのだ。馬鹿げた空想が次から次に起ってくる。そして空想の合間合間には、これが自分の選ぶべき娘だろうか、もっと他に優れた娘がいはすまいかと、世界中の処女をよせ集めて、その顔を一つ一つ覗いてみたい気がするのだ。