Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はるのまぼろし

春の幻

豊島 与志雄

Lesen Sie 春の幻 (はるのまぼろし) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.888 Zeichen · 6 Bildschirme

Aozora Bunko

それらのものの上に、夜の露が繁く結ばれて、清浄な朝日の光が、澄みきった爽かな世界を齎してくる。萠え出たばかりの瑞々しい花や葉や、眼覚めたばかりの汚点のない魂が、一度にぞっとおののいて、眼に見えない輝しいもの――神とも云えるもの――の方へ、おずおずと瞳を挙げる。清らかな求道の園である。然しそれはただ一瞬のことである。間もなく凡ての瞳が、春の息吹きにふーっと曇ってくる。そして、神のない地上の力弱い楽園が――刹那々々の歓楽と其処から来る哀愁とが、凡てを包み込んでいく。

私の斯かる春の幻は、可なり不安で揺ぎ易い。実際、春は余りに慌しい。私一個の感じから云えば、桜の花の開きそめる四月上旬までは、まだ多分に冬であるし、木の葉の出揃った新緑の頃は、春と異った別の世界である。