Japanische Klassiker mit Furigana
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はる
春
宮本 百合子
Lesen Sie 春 (はる) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.512 Zeichen · 8 Bildschirme
硝子戸に不思議に縁がある。この間まで借りていた二階の部屋は東が二間、四枚の素通し硝子であった。朝日が早くさし込む。空が雑木の梢を泛べて広く見渡せ、枝々の間から遙に美しく緑青をふいた護国寺の大屋根が見えた。温室に住んでいるよう、また、空中に浮いているような気もしたが景色はよかった。今度引越した小さい家は、高台ではあるが元の借間程見晴しはない。けれども硝子戸はここにもあって、南方の縁側が八枚、雨戸なしだ。黎明、朝、ひる間、順々に外光がたっぷり八畳に流れ込む。夜、森とした中で机に向ってい、ひょいと頭を擡げると、すぐ前に在る障子の硝子面、外の硝子の面と、いきなり二重に自分の顔や手つきが映り、不気味になる。――ああ、こんなにすき透し! 泥棒にすっかり見られてしまう。どうしても、カアテンがなければ駄目だ!
カアテンをまだ買わないので、朝少し眩しい。私は沢山ぐっすり眠りたい。そこで、工面をし、机の引出しから友達の香典がえしに貰った黒縮緬の袱紗を出した。それを二つにたたみ、鼻の上まで額からかぶる。地がよい縮緬なので、硝子は燦く朝なのに、私の瞼の上にだけは濃い暗い夜が出来る。