Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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じかん

時間

横光 利一

Lesen Sie 時間 (じかん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.473 Zeichen · 32 Bildschirme

Aozora Bunko

すると、私の傍にいた佐佐が物もいわずに私の袖をひっぱって狼狽(うろた)えたように崖の中腹を指さしたので、何心なく見るとそこには細々とはしているが岩から流れ出ている水が月の光りに輝きながらかすかな音さえ立てている。水だ水だといおうとしたが声が出ない。佐佐は直ぐ崖の方へ膝をもみながら近よって降りていったが暫くすると水を沢山飲んだのであろう、急に元気になって大声で下から水だ水だと叫び出した。私も小さな声で同時に水だ水だと叫んだ。

それでもう一同は助かったと同様であった。小屋の中の者は足が動かないのにかかわらず我れ勝ちにと腹這いになって崖の方へ降りて来ると、蜘蛛の巣をいっぱいつけた蒼然とした顔を月の中に晒しながら変る変る岩の間へ鼻を押しつけた。岩の匂いに満ちた清水が五百羅漢のような一同の咽喉から腹から足さきまで突き刺さるように滲み透って生気がはじめて動き出して来ると、私も皆と一緒に月に向ってこれこそ明瞭に生きていることだと感じるかのように歎声を洩してはまた岩の間へ口をつけた。しかし、私はふと皆が置き去りにして来た病人のことを思うともうひょっとするとひとり眠入ってしまって死んでいるのではないかと思われて、皆の者にどうかしていっぱいでも病人に水を飲ましてやる工夫はないかというと、そうだそうだ病人が何よりだということ