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Japanische Klassiker mit Furigana

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ばんさん

晩餐

素木 しづ

Lesen Sie 晩餐 (ばんさん) von 素木 しづ (しらきしづ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.410 Zeichen · 7 Bildschirme

Aozora Bunko

また彼等は、ごた/\した騒がしさの為に、雨風の音を耳にしない。

若い父親は、彼の赤く大きな片手を忙しくテーブルの上に拡げてゐた。そしてその眼は子供によって仕方がなく湧き出た笑を堪へながら、子供をさゝへて、その小さな赤い口に僅の食物を入れてやった。そのすきに彼は、あわたゞしく大きな口を開けた、彼は彼自身の口のなかに御飯を押し込んだ。

母親は、壁によって黙ってうつむきながら藍色の深い鍋に煮た牛肉と玉葱と、人参とジャガ芋とを白い皿に盛ってゐた。そしてなにか云はうとして、甘く柔かく煮たジャガ芋を口のなかに入れて、男の顔を見たが、彼女はなにかに気がついたやうに、ふと口を閉ぢて茫然と遠い所を見た。

彼女の口のなかのジャガ芋が、丁度凍ったかのやうに固くざく/\してゐて、非常に不味かったのだった。彼女はふと驚いたやうに黙って前歯でかみなほしたが、彼女の心は、いつか淋しくうつむいてしまってゐた。

彼女は日々の苦しみや悲しみ疲れを思出したのであった。そしてジャガ芋の無味な、かゝはりのない冷やかな不味さが、彼女に静かな淋しい遠くはなれた心を与へた。彼女は結婚後の貧しい悲しみにみちた現実の生活を思ひ浮べたのであった。