Japanische Klassiker mit Furigana
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こよみ
暦
壺井 栄
Lesen Sie 暦 (こよみ) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.332 Zeichen · 112 Bildschirme
波止場の突端のような所で石灯籠にもたれている八重の、笑いかけたような顔は満ち足りた者の持つ表情であり、そのなごやかな目のつけどころには、妻をこれほどに美しくさせる坂田が、どのような顔をして向い合っていたのであろうか。写真の裏には亡き妻を偲ぶ若者の恋情がこまごまと書きつらねられてある。今は遠く坂田の郷里である北陸の高田の在に見知らぬ坂田の祖先たちとともに埋もれている八重、雪が深いと聞くその土地では花を祀られることも稀であろう。危篤と聞いてもかけつける者もなく、肉身の誰にも会わずに死んだ八重ではあるが、いねは泣きながらも、写真を見るたびに八重は仕合せであったと大きな救いを見つけだす思いがした。
寝てばかりいれば思いはなお子らの上にかかった。十人もの子供たち、子育てぶにが多いと人にもいわれ、自分もそう思っていた。歳月はその子らにいろいろな道を辿らせ、子供らは皆それぞれ持前の生き方で生き、そして半分はもう死んでしまっている。落葉のように消えてなくなって、この世のどこにもいない五人の子供、遠い土地で暮している者、今もなお同じ屋根の下で朝夕顔を見合っているクニ子や実枝、その我子たちへ自分はどれだけのことをしてやり、どんなことが自分にかえってきているか。