Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こよみ

暦

壺井 栄

Lesen Sie 暦 (こよみ) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.332 Zeichen · 112 Bildschirme

Aozora Bunko

「今夜のおかずは手紙じゃのう、ああ儲けた、儲けた」と冗談をいう。重吉はなお笑いつづけ、左手を顔の前で振った。笑いはなかなかやまず、苦しそうに大きく肩を波うたせて、あえぎながらなお笑いつづける。見ている実枝の方ではいいようのない悲しさに変って背中をさすった。そして今考えもなく病父の笑いを刺激したことを悔んだ。そして、気を落ちつけ、何かいおうと試みては、なおもつきあげてくる笑いを押えようとして息をつめている父親に、

「饅頭か、リンゴか、サイマットか」と、その好物を一つ一つゆっくりとたずねた。どれにも重吉はかぶりを振った。サイマットとはパイナップルという重吉の言葉であった。

「手紙を食いたい?」

実枝は口の中で呟き、この手紙のどこが重吉の食欲をそそったのであろうかと、も一度手にとって眺めてみた。笑いつかれて涎を流している重吉に手拭をとってやり、

「お母さんのように口が利けたらのう」と、思わず洩すのであった。

やっとおさまった重吉は先刻のことをあらためていいだそうとしたが、そう考えただけでまた笑いがこみあげてきそうで、なかなか口が利けなかった。何度も突っかえてはやめ、ついには恨めしそうに実枝の顔を見た。