Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あらしのなか

暴風雨の中

山本 周五郎

Lesen Sie 暴風雨の中 (あらしのなか) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.339 Zeichen · 30 Bildschirme

Aozora Bunko

二

けれどもそれが休まずに増水していることは慥かだった、眼に見えぬちからで、じりじりと、それはもう階下を半ば以上も浸していた。まもなく軒庇までつきそうであった。

「おめえ舟で来たのか」

三之助が云った。彼は外を見たままで、ごくしぜんにそう云った。

二

風が襲いかかり、三之助の捉まっている雨戸が、危なく吹き飛ばされそうになった。三之助は部屋へ戻りながら、もういちど云った。

「おめえ舟で来たのか」

こんどはまえより高い声であった。そして彼はそこへ坐った。男はぎょっとした。男は次の八帖にいたが、積んである家具の間で、慌てて濡れた手足を拭きながら、なにか答えた。合羽を衣ていたので、めくら縞の長半纒はどうやら乾いているが、髪毛からはまだ水が垂れた。

「断わりなしに入っちまったが」男は頭を拭きながら、こんどは大きな声で云った、「邪魔をしてもいいかね親方」

「舟の当る音がしたっけ」三之助は云った、「おめえ舟で来たんだな」

「小塚っ原から水だった」男は云った、「ちっとばかり櫓が使えるんで、思いきって漕ぎだしたんだが、いけねえ、千住大橋のところで流れに押されてどうにも突っ切れねえ、死にもの狂いでやっとこの家まで漕ぎつけたんだ、いっとき、もうだめだと思った」