Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あさがおぞうし

朝顔草紙

山本 周五郎

Lesen Sie 朝顔草紙 (あさがおぞうし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.019 Zeichen · 29 Bildschirme

Aozora Bunko

琴の音は哀調を含んで、咽ぶように、訴えるように断続している。信太郎は我にもなく、惹かれるようにその部屋の障子外へ行って佇んだ。歌声は嫋々と起って、

うらめしのわが縁

薄雪の契りか消えにし

人の形見とて――

それを歌うたびに、信太郎を想って泣いたという悲しい唄である。

涙ばかりや残るらん……

と聞きも果てず、つきあげてくる涙を抑えかねて、信太郎はくくと喉を鳴らし、両手で面を蔽いながら嗚咽を忍んだ。その時、琴の音がはたと止んで、

「――そこに誰かいやるか」と小雪の声がした。

「信太郎でござる」「ああ――」

小雪の驚く気配がして「どうぞお入り遊ばしませ、取散らして居りますけれど……」「いや晩うござるから失礼致します。通りかかりに琴の音をうかがったものですから、思わずお騒がせ仕った。どうぞお赦し下さい」「いいえ却ってお恥しゅう存じます」小雪の声は、心なしかうるんでいた。

「――お入り遊ばしませぬか」「忝うござるが、また明日にでも」「左様でござりますか、ではこのまま失礼を……」「――御免」

強く惹かれる気持を抑え、そこを離れて廊下のかどまで来ると、後に障子の開く音がした。