Japanische Klassiker mit Furigana
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あさがおぞうし
朝顔草紙
山本 周五郎
Lesen Sie 朝顔草紙 (あさがおぞうし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.019 Zeichen · 29 Bildschirme
監物はじっと信太郎の面を覓めていたが、
「未練だぞ信太郎、文絵をそれほどに想って呉れる志は忝ないが、その方は安倍の家名を継ぐべき大切な身上、一日も早く他より嫁を迎えて、親に安心をさせるが孝の道だ」「孝の道、――そうかも知れませぬ」
信太郎は顔を伏せて「私の願いは、未練かも知れませぬ、けれど――小父さま、……信太郎は十年も、十年も文絵どのの幻を胸に秘めて来たのです、顔も覚えず姿も知りませぬが、私の心には消すことの出来ない文絵どのの俤が刻みつけられています……他の者はどうあろうとも、私には忘れられません、未練者とお笑い下さい、信太郎には、文絵どのの他に生涯妻はないのです」
監物は黙っていた。小雪も蒼白めたおもてを伏せたまま黙っていた。然し、娘の脇にひき添った乳母は、肩を顫わせながら袖を眼に押当てていた。
「かね、位牌を持って来てやれ」監物が暫くして云った。
「――旦那さま」「ええ早く持って来るのじゃ」乳母は起って行ったが、直ぐに位牌を捧げて来た。
「頂戴致します」信太郎は押戴いて受取ると、じっと位牌の面を覓めてから、静かに旅嚢の中へ納め、「それでは是で」と立上った。