Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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すだま

木魂

夢野 久作

Lesen Sie 木魂 (すだま) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.668 Zeichen · 46 Bildschirme

Aozora Bunko

すると間もなく彼の立佇まっていた処から四五本目の、古い枕木の一方が、彼の体重を支えかねてグイグイと砂利の中へ傾き込んだ。その拍子に他の一端が持ち上って軌条の下縁とスレ合いながら……ガガガ……と音を立てたのであった。

彼はその音を聞くと同時に、タッタ今の笑い声の正体がわかったので、ホッと安心して溜息を吐いた。それにつれて気が弛んだらしく、頭の毛が一本一本ザワザワザワとして、身体中にゾヨゾヨと鳥肌が出来かかったが、彼はそれを打消すように肩を強くゆすり上げた。黒い鞄を二三度左右に持ち換えて、切れるように冷めたくなった耳朶をコスリまわした。それから鼻息の露に濡れた胡麻塩髯を撫でまわして、歪みかけた釣鐘マントの襟をゆすり直すと、又も、スタスタと学校の方へ線路を伝い初めた。いつも踏切の近くで出会う下りの石炭列車が、モウ来る時分だと思い思い、何度も何度も背後を振り返りながら……。

彼は、それから間もなく、今までの悲しい思出からキレイに切り離されて、好きな数学の事ばかりを考えながら歩いていた。彼自身にとって最も幸福な、数学ずくめの冥想の中へグングンと深入りして行った。