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Japanische Klassiker mit Furigana

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ほんじょまつざかちょう

本所松坂町

尾崎 士郎

Lesen Sie 本所松坂町 (ほんじょまつざかちょう) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.622 Zeichen · 55 Bildschirme

Aozora Bunko

野良着のままの老百姓が、裏で働いている。女房に、それ茶を出せ、それ座蒲団を、なぞといっているあいだに彼は縁ばたに腰をおろす、下肥えのにおいがどこからともなく漂ってくる庭先きで、女房が運んでくる出がらしの番茶を啜りながら今年の植附けはどうだったとか、暮し向きに不如意なことはないかとか、世間ばなしに笑い興じている上野介の姿の中には、およそ領主というものにふさわしい威厳はどこにもなかった。

もちろん、彼にも名君らしい行状を意識的に示すことによって村民の信頼を深めようという気持がなかったわけではあるまい。しかし、それがために、あらかじめ新聞社に電話をかけ、彼が農家を訪問する時間を打合せ、写真班に、馬の頭を撫でているところを特に写させるような真似はしなかった。

今もなお、横須賀村の外郭に黄金堤という名前で呼ばれている堤防の一部が残っているが、これは彼が、灌漑の便に乏しく、毎年梅雨期に入ると雨水が氾濫して水害に悩まされている吉良郷の住民のために丘陵の起伏を利用して築いた堤防である。これが実現されると領内の耕作地はたちまち豊饒な田園に一変するが、しかし、これに隣接する他領、特に岡山以北の土地は矢作川大平川の下流が逆流することになるので隣接領の大名から再三中止の申入れがあったにもかかわらず、一度決潰したら二度と再築し