Japanische Klassiker mit Furigana
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まつかぜのもん
松風の門
山本 周五郎
Lesen Sie 松風の門 (まつかぜのもん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.862 Zeichen · 26 Bildschirme
「それで己は、これから鷹ノ巣山へ行く、たぶんこれが御奉公納めになるであろう、おまえが当家へ来てから三年になるが、なに一つしてやることができなかった、おまえのためにはまことに不仕合せな縁であったが、不運なめぐりあわせだと思って諦めて呉れ」
「勿体のうございます、わたくしこそ……」うめは微笑しながら眼をあげた。然しその唇は感動を耐えるために痙攣っていた、「わたくしこそ、不束者で、色々と旦那さまの足手纒いにばかりなっておりました、どうぞお赦しあそばして……」
「夫婦は二世という」八郎兵衛はつと妻の手を取った、「次の世には、まことのめおとになろうぞ」
嫁して来て三年余日、初めて触れる良人の手であった、初めて聴く血のかよった言葉であった。この瞬間を少しでも延ばすことが可能なら、自分の七生を賭しても悔いはない。うめは心の内でそう絶叫しながら、つきあげてくる嗚咽をけんめいに抑えつけていた。
「では行ってまいる」八郎兵衛は盃を措いた。
「どうぞ、お首尾よろしく」うめはもう面をあげられなかった。
八郎兵衛は馬に乗って屋敷を出た。城下を出端れたところに、八十島治右衛門が十五人の配下と騎馬で待受けていた、別に五十人ばかりの鉄砲足軽もいて、揃って河内村の方へ出発した。