Japanische Klassiker mit Furigana
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えいぞうのし
栄蔵の死
宮本 百合子
Lesen Sie 栄蔵の死 (えいぞうのし) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.295 Zeichen · 77 Bildschirme
けれ共、絶えずせせこましい気持になって居るお君には、一日の時間も、非常に長い、非常に不安心なものであった。
お君は、思い出に一杯になった体を、溜息と一緒に寝返りを打たして、今までとは反対の壁側に顔を向けた。
「母はんは、苦労ばかりお仕やはっても、いい智恵の浮ばんお人やし、達やかて、まだ年若やさかい、何の頼りにもならん。
たよりにならない、母親や弟の事を思って、お君はうんざりした様な顔をした。
誰か一人、しっかりとっ附いて居て安心な人を望む心が、お君の胸に湧き上って、目の前には、父親だの母、弟又は、家に居た時分仕事を一緒にならって居た友達の誰れ彼れの顔や、話し振りがズラッとならんだ。友達共は、皆相当に、幸福に暮して居るのに、自分は今どうして居るのだろうと思うと、薄い眉根にくしゃくしゃな「しわ」を寄せて、臭い様な顔付をした。
そして、さのみ気が乗ったでもない様にして、枕元の小盆の傍に小寒く伏せてあった雑誌を取りあげた。お金が小やかましいので、日用品以外の物と云ったら、自分の銭で買う身のまわりの物まで遠慮しなければならない中を、恭二がお君のために買って来てくれたたった一冊の雑誌である。