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Japanische Klassiker mit Furigana

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くりのはなのさくころ

栗の花の咲くころ

佐左木 俊郎

Lesen Sie 栗の花の咲くころ (くりのはなのさくころ) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.440 Zeichen · 14 Bildschirme

Aozora Bunko

一

暗欝な空が低く垂れていて家の中はどことなく薄暗かった。父親の嘉三郎は鏡と剃刀とをもって縁側へ出て行った。併し、縁側にも、暗い空の影が動いていて、植え込みの緑が板敷の上一面に溶けているのであった。

「それでも幾らか縁側の方がよさそうだで。」

嘉三郎はそう呟くように言いながら、板敷へ直かに尻を据えて、すぐ頬の無精髭を剃りにかかった。

「お父さん! 序に、鼻の下の方も、剃ってしまいなせえよ。」

障子の中から母親の松代がそう声をかけた。

「余計な口出しをするな!」

嘉三郎は怒鳴るようにして言い返した。

「余計なことであるもんですかよ。いくら髭に税金がかからねえからって、何も、世間の物笑いにまでされて……」

「笑いたい奴には笑わして置けばいいじゃねえか。俺には俺の考えがあるんだ。俺の気持ちが部落の奴等になどわかるもんか。」

「お父さんがその気だから、美津なんかだって、家にいられねえんだよね。そりゃあ、美津は、お嬢さんで育ったかも知んねえけど、今は現在なんだから、どこへだって嫁にやってしまいばよかったんですよ。それを、お父さんたら、昔のことばかり言って、美津や嘉津が(お嬢さんお嬢さんて!)言われていた時の気で髭ばかり捻っているもんだから、結局、誰ももらい手が無くなってしまったんでねえかね。