Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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くりのはなのさくころ

栗の花の咲くころ

佐左木 俊郎

Lesen Sie 栗の花の咲くころ (くりのはなのさくころ) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.440 Zeichen · 14 Bildschirme

Aozora Bunko

「風邪を少し引いて……」

横から忠太郎がそう言った。

「今時の風邪は永引くもんでなあ。それにしても、風邪ぐれえなら、安心だ。母親が心配してたぞ。」

「お父さん!」

美津子はそう遣る瀬ないように叫びながら、布団に顔を押し当てて、静かに歔欷いた。

「美津! 俺が来たのに泣いたりするなあ。泣くなら帰るで。」

併し、嘉三郎の頬にも、涙が伝わって来ていた。

「そこに栗の木があるな? 這入って来るどき、葉の雨滴が顔さかかって……」

嘉三郎はそう言って眼のあたりを拭った。

「お父さん! 今まで黙っていて、本当に申し訳のねえことで。恩を忘れたようなごとして……」

「何を水臭いことを言うんだ。それより、何だってこんなところにいるんだ。東京さでも行けばいいじゃねえか? こんなどこで俺の恥まで晒すより、東京さでも行けばいいじゃねえか? 馬鹿な奴等だっ! 東京さでも行って立派になって来う! 忠太郎!」

「それも考えでいだのです。併し、お父さんの方に誰も稼ぎ手がいなくなるごと考えたりして……」

「馬鹿なっ! 稼がせるために忠太郎を美津の聟にしたとなると、それこそ、世間さ顔向けが出来なくなる。