Japanische Klassiker mit Furigana
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ばいしのつえ
梅颸の杖
吉川 英治
Lesen Sie 梅颸の杖 (ばいしのつえ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.966 Zeichen · 32 Bildschirme
誰と誰だったか、今朝になってみるとちと恥かしい。
どうしたろうか。
その顔は一つも見えない。四郎次もいない。
慚愧の朝は、山陽を胃や頭の不快をもって責めるばかりでなく、大塩との会見まで考えさせた。
今まで持して来たものを、何できのうは態度を曲げて、自分から彼の門へと足を運んだろうか。
もし、外史の完稿後、その出版と同時に、彼の批評や勢力下の援助をも吸収しようという考えを持たなかったならば、自分は、昨日の訪問をしなかったに違いない。
同時に、大塩父子が、自分を迎えた態度も、決して、白紙の好意ではなかった。
何かある。後になって考えれば、杖の事なども、一種の示威だ。官僚臭だ。
山陽は自分の愚さが、骨身にこたえて来た。
安閑としているには耐えられない弾力で、夜具を刎ねた。
夜が明けかけている。
源氏ぶすまの切嵌めの障子が、蒟蒻色にほの白くなっていた。
彼は、つかむように、水差をとって、茶碗に二はいほど、がぶがぶと飲んだ。
『あ、お目ざめでございますか』
隣りの部屋から、四郎次が、すっぽんのように首を出した。――あ、と眼を瞠って、
『おまえは、まだ居たのか』