Japanische Klassiker mit Furigana
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かんおけのはなよめ
棺桶の花嫁
海野 十三
Lesen Sie 棺桶の花嫁 (かんおけのはなよめ) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 42.845 Zeichen · 86 Bildschirme
あなた心配しないでネ」
「でも、こうなっては僕も――」
「心配いらないのよ。あたしに委せて置いてちょうだいよ」
「そうだ、丁度会社の方も仕事を始めて、給料をくれることになったから、どこか焼けていない牛込か芝の方に家を見つけて移ろうか。それともここで君と――」
「いやいやいや」とお千は大きくかぶりを振って、その先を云わせなかった。
「引越した方がいいと思うわ。あたし、どこへでもついてゆくわ」
そういったお千は、そこでまた身体をブルブルと慄わせると、慌てて座を立って、奥へ駈けこんだ。
9
お千が、冷たい骸となったのは、その翌日のことだった――。
その日、杜は会社へ出たが、戦争のように忙しい仕事の中にいて、ともすれば仕事をまるで忘れてしまうことがあった。彼はなにかの隙があったら、お千と一緒に住む家を、焼け残った牛込か芝かに求めたいものだと焦せっていた。だが彼の希望は、あとからあとへと押しよせてくる会社の仕事によって、完全に押し潰されてしまった。しかもその日は、夕方になっても仕事の段落がつかず、遂に会社を出たのが夜更の十時だった。会社に泊ってゆけという上役や同僚たちの薦めであったけれど、彼はそれをふり切るようにして、懐中電灯片手に、お千の待っている家路に急いだのであった。