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Japanische Klassiker mit Furigana

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ならのわかば

楢の若葉

佐藤 垢石

Lesen Sie 楢の若葉 (ならのわかば) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.927 Zeichen · 4 Bildschirme

Aozora Bunko

魚籠の中で、バタバタと跳ねる魚の響きが、腰に結えた紐から身体に伝わってきて、何とも快かった。

腹がすいてきた。

『もう、帰ろう』

父は、にこにこしながら私を顧みて言った。もう朝の陽は一ひろほども空へ昇っていた。晩春の朝の微風が、砂丘の小草の若葉を撫でながら渡ってきて、糸の目印の羽毛をひらひらと動かす。

みぎわの小石には、微かにかげろうが揺れはじめていた。

私は父の言葉に心で応えて、口では答えなかった。それほど魚の当たりが忙しい。いまの目印の動きは、魚の当たりか、風の煽りか、その判断に固唾をのんでいる時に『帰ろう』と言う、父の言葉であったのだ。

わずかに、竿先へ煽りをくれて軽く鈎合わせをすると、掛かった。魚は、水の中層を下流へ向かって、逸走の動作に移った。やはり、水鳥の白羽の動きは、はやの当たりであったのである。

『帰りましょう』

と、私ははやの口から、鈎をはずしながら答えた。

赤城山の裾は西へ、榛名山の裾は東へ、そのせばまった峡の間に、子持山と小野子山が聳えている。子持山と小野子を結ぶたるみを貫いて高い空に二つの白い山が遠霞を着ているのは、谷川岳と茂倉岳とである。