Japanische Klassiker mit Furigana
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えのきものがたり
榎物語
山本 周五郎
Lesen Sie 榎物語 (えのきものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.519 Zeichen · 67 Bildschirme
六
そのころは風も吹きつのるばかりだし、雨も凄いような降りかたで、屋敷ぜんたいが怒濤に揉まれてでもいるような感じだった。
「これに覚えがあるか」と云って半左衛門は、脇の机の上にある手紙のような物を、静かに手で押えた、「――いつからこんなことをしていたんだ」
六
さわには父がなにを云っているのかわからなかった。屋敷の背後にのしかかっている山で、すべての樹木がごうと叫び声をあげ、家の棟がぎしっときしんだ。
「親に隠れて男と文のやりとりをする」と半左衛門が刺すような調子で続けた、「しかも樵あがりの百姓の伜などと、――おまえは河見の家や親の顔に泥を塗るつもりか」
「なにを仰しゃるのかわかりません」とさわは答えた、「文のやりとりとはなんのことですか」
半左衛門は机の上にある書状のような物を叩いた、「これは江戸の国吉から来た手紙だ、ごまかしてもだめだぞ」
さわは片手で口を押えた。危なく叫び声が出そうになったのだ。半左衛門はそれを自分なりに解釈したのであろう、激しい言葉で叱りつけ、責めたてた。こういうとき、世間の親たちが云うであろうきまり文句で、不謹慎とか、みだらとか、無分別とか堕落などという言葉が繰り返され、いつごろからこんなことをしていたかと問い詰めた。