Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.073 Zeichen · 223 Bildschirme
彼女は新八のうしろへまわって、着せかけてやりながら、「今日もあの茶屋よ」と囁いた。
「柿崎さんがいるから出られませんよ」と新八は云った。おみやは「大丈夫」と云った。
「兄はもう承知よ」
新八はおみやに振返った、「それは、どういうことですか」
「どういうことって」
「柿崎さんが承知だという意味ですよ、どういう理由でそうなったんです」
「いいじゃないの」とおみやは眼をそらしながら、うしろから袴腰を当てた、「そんなことあんたは知らなくってもいいの、兄のほうはあたしが引受けたんだから、ね、あと半刻ばかりしたら出るのよ」
「出られたら出ますけれど」
「大丈夫だって云ってるじゃないの」おみやはそっと、彼の肩を抱いて云った、「あとで知らせるわね、そうしたら先に出て、あの茶屋へいっていてちょうだい、わかったわね」新八はあいまいに頷いた。
おみやは「きっとよ」と、もういちど抱きしめて、新八に頬ずりをした。濃い化粧の香料がむせるほどつよく匂い、弾力のある、柔らかい、熱い躯が新八を包んだ。
「おお可愛い」とおみやは囁いた。
新八と廊下で別れたおみやは、そのまま兄の部屋へいった。
六郎兵衛は酒を飲んでいた。