Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.073 Zeichen · 223 Bildschirme
七十郎はそこで言葉を切った。甲斐は黙っていたが、七十郎があとを続けないので、訝しそうに振向いた。
「聞いておいでですか」と七十郎が云った。
甲斐は、聞いている、と答えた。
「貴方は佐月どのの葬儀にも松山へゆかれなかったし、青根の宿では私の義兄(伊東新左衛門)と話しもされなかった」
「話しはしたと思う」
「したのは義兄です、貴方ではない、義兄はまじめに、しんけんな気持で貴方を訪ね、貴方の意見を聞こうとした、ところが貴方はまるで相手にもならず、義兄の問いに対して満足な答えもされなかった、義兄は帰って来て、あなたのひとがらがまったく変った、と云っていましたよ」
「では七十郎と意見が合ったわけだな」
「そういうところです」
七十郎は汁椀の蓋を取り、それに酒を注いで飲んだ。そして、これを要するに、と微笑しながら云った。
「つまり、これらの条件を総合すれば、貴方が一ノ関の与党になったという評は、生ぜざらんと欲するも得べからざるものだということができるでしょう」
「世評はたいてい好ましいように作られる」と甲斐は云った。
「そういう場合もある、というのでしょう」と七十郎が訂正した、「世評は世人の好ましいように作られる場合もある、けれどもしばしば、ふしぎなくらい真相をうがっていることがあるものです」