Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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とちのはな

橡の花

梶井 基次郎

Lesen Sie 橡の花 (とちのはな) von Kajii Motojirō (梶井 基次郎) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.685 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

それは螢を捕まえた一人の男です。だしぬけに「これ螢ですか」と云って組合せた両の掌の隙を私達の鼻先に突出しました。螢がそのなかに美しい光を灯していました。「あそこで捕ったんだ」と聞きもしないのに説明しています。私と友は顔を見合せて変な笑顔になりました。やや遠離ってから私達はお互いに笑い合ったことです。「きっと捕まえてあがってしまったんだよ」と私は云いました。なにか云わずにはいられなかったのだと思いました。

飯倉の通りは雨後の美しさで輝いていました。友と共に見上げた七葉樹には飾燈のような美しい花が咲いていました。私はまた五六年前の自分を振返る気持でした。私の眼が自然の美しさに対して開き初めたのも丁度その頃からだと思いました。電燈の光が透いて見えるその葉うらの色は、私が夜になれば誘惑を感じた娘の家の近くの小公園にもあったのです。私はその娘の家のぐるりを歩いてはその下のベンチで休むのがきまりになっていました。

(私の美に対する情熱が娘に対する情熱と胎を共にした双生児だったことが確かに信じられる今、私は窃盗に近いこと詐欺に等しいことをまだ年少だった自分がその末犯したことを、あなたにうちあけて、あとで困るようなことはないと思います。