Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 117.781 Zeichen · 235 Bildschirme
蚊のうなりが、その時、異様に高くひびいて三人を包んだ。しばらくして、
「よう来てくれたな。」
と、先生は首を垂れたまま、両手を帯のあたりに組みあわせた。
そのあと、また、かなり永いこと沈默がつづいたが、
「まあ、二階にあがってくれ。話があるんじゃ。」
二人は先生のあとについて、二階にあがった。八畳の、天井の低い部屋で、床の間はあったが、軸物一つかかっていなかった。安物の机が一脚と、その上に四五冊の数学の参考書を立てた木立が置いてあるきり、部屋中ががらんとしていた。窓のそとはすぐ隣の屋根で、あいだには青い葉一つ見えなかった。
三人は座蒲団なしで坐ったが、坐るとすぐ、宝鏡先生はもう一度、
「よく来てくれたな。」
と、いかにも嬉しそうに言って、二人にあぐらになるようにすすめた。それから、
「わしのうちに生徒がたずねて来てくれたのは、君らがはじめてじゃ。君らがはじめての終りじゃな。」
と、わざとらしく笑ったが、その声はうつろで淋しかった。
次郎も新賀も、返事のしようがなくて、默って首をたれていると、先生は一人でいろんなことを喋り出した。
「わしゃ、頭がわるい。じゃが、今日校長先生が言われたように、真心はあるんじゃ。