Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 117.781 Zeichen · 235 Bildschirme
一二 天神の杜
「まあ、この坊ちゃん、恐いこと。でも、あんたのお蔭ですっかり用がすみましたわ。もうこの婆さんも二度とはお伺いしませんから、安心して下さいね。さようなら。」
女は、それから仙吉の方を見て、
「あんたにも、用さえすめば文句なしだわ。ほほほ。旦那にもよろしくね。」
仙吉は、その時まで、すっかり肚胆をぬかれたような恰好で、店の上り框に突っ立ち、次郎の方をぽかんと眺めていたが、女にそう言われると、まるでからくり人形のように、ぴょこり頭をさげた。
次郎は、女が店を出るとすぐ、なるほど学校の通り道に春月亭という料理屋があり、今のはその門口あたりでよく見かける女だった、ということに気がついたのである。
一二 天神の杜
さて、さっきから、簾戸一重へだてた茶の間に坐りこんで、聞き耳を立てていたお祖母さんに、店の話声が逐一聞えていないはずはなかった。お祖母さんは、事の成行しだいでは、自分で店に出て打って、春月亭のお内儀と一太刀交える肚になり、半ば腰を浮かしてさえいたのである。ところが、次郎がだしぬけに「酒はいくらでもあるんだ」と叫んで、汲桶をさげて井戸端の方に走って行ったのを見ると、さすがにちょっと驚いたふうでもあったが、そのまま腰を落ちつけてしまい、それからは、横目でじろじろ店の方を睨んだり、何かひとりでうなずいたりするだけだっ