Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 117.781 Zeichen · 235 Bildschirme
道行く人は、誰も小さな閉店の貼紙なんかには気をひかれないらしかった。たいていは見向きもしないで通って行った。たまに店戸がおりているのに気がついて、ふり向く人もあったが、貼紙を読むために立ちどまった人はほとんどなかったようだ。ただ、近所の人たちだけが、ちょっと眼を見はって貼紙を読んだ。しかし、それも大して驚いた様子はなく、中には変な微笑さえもらしたものがあった。
僕は、この冷淡さに、最初はかえってほっとする気持だった。しかし、あとではたまらない腹立たしさを感じて来たので、午後からは一度ものぞいて見なかった。
仙吉も文六も、奉公先が見つかったらしい。或は、もうとうに見つかっていたのかも知れない。父は、給料のほかに金一封ずつを包んで二人に暇をやった。夕飯には、二人の送別会をかねて、何か御馳走があるはずだったが、二人共それを断って、午飯をすますとすぐおいとまをした。僕は、しかし、この二人が道行く人達のように冷淡であったとは思いたくない。
父が家のものみんなに閉店の決心を話してから、もう今日で四日になるが、昨日まで飯時にさえなると泣いたり怒ったりしていた祖母が、今日はふしぎに静かだった。