Japanische Klassiker mit Furigana
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うたあんどん
歌行灯
泉 鏡花
Lesen Sie 歌行灯 (うたあんどん) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.094 Zeichen · 72 Bildschirme
」
「何んでも構わぬ、私は急ぐに……」と後向きに掴まって、乗った雪駄を爪立てながら、蹴込みへ入れた革鞄を跨ぎ、首に掛けた風呂敷包みを外ずしもしないで揺っておく。
「一蓮託生、死なば諸共、捻平待ちやれ。」と、くすくす笑って、小父者も車にしゃんと乗る。……
「湊屋だえ、」
「おいよ。」
で、二台、月に提灯の灯黄色に、広場の端へ駈込むと……石高路をがたがたしながら、板塀の小路、土塀の辻、径路を縫うと見えて、寂しい処幾曲り。やがて二階屋が建続き、町幅が糸のよう、月の光を廂で覆うて、両側の暗い軒に、掛行燈が疎に白く、枯柳に星が乱れて、壁の蒼いのが処々。長い通りの突当りには、火の見の階子が、遠山の霧を破って、半鐘の形活けるがごとし。……火の用心さっさりやしょう、金棒の音に夜更けの景色。霜枯時の事ながら、月は格子にあるものを、桑名の妓達は宵寝と見える、寂しい新地へ差掛った。
輻の下に流るる道は、細き水銀の川のごとく、柱の黒い家の状、あたかも獺が祭礼をして、白張の地口行燈を掛連ねた、鉄橋を渡るようである。
爺様の乗った前の車が、はたと留った。
あれ聞け……寂寞とした一条廓の、棟瓦にも響き転げる、轍の音も留まるばかり、灘の浪を川に寄せて、千里の果も同じ水に、筑前の沖の月影を、白銀の糸で手繰ったように、星に晃めく唄の声。