Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうたい
正体
山本 周五郎
Lesen Sie 正体 (しょうたい) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.312 Zeichen · 15 Bildschirme
龍助危篤という電報を手にしたとき、津川は電文の意味を知るよりも佐知子に会えるなと思うほうがさきだった。
「なんていうやつだ」
それでも彼はいちおうそう云って自分を苦々しく反省したが、車で東京駅へかけつける気持には、すでにどう抗ってみても危篤の友を見舞うにふさわしいものはなくて、抑えても抑えてもふくれあがる女への情熱でいっぱいだった。
佐知子とは彼女が龍助のあとを追ってフランスへ行くとき会ったきり手紙のやりとりもせず五年になる。
三年まえに帰朝したという通知を龍助からもらったおりには、前後を忘却するほど感情の紊れに襲われたが、すでに二人は龍助の前では逢うことのできぬ関係になっていたから、そのときは無論のことその後もずっと相会う機会を避けるようにしていた。
龍助は帰朝してから半年ほど、東京で画の仲間と生活をもったが、佐知子はチロルで喀血して以来ずっと健康をとりもどせずにいると云って須磨の家に残っていた。
そして龍助が東京をひきあげるについて迎えがてら春服のモオドを見に彼女が上京すると聞いたときには、津川は反対にそのときかかっていた仕事の材料を集めに鳥取市へでかけてしまった。