Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうたい
正体
山本 周五郎
Lesen Sie 正体 (しょうたい) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.312 Zeichen · 15 Bildschirme
どの部屋か――と訊く言葉の意味は津川をまったく狼狽させた。
「あの八十号の画ね、裸体の」
津川は返辞をせずに話を変えた、「あの画はまだ画室にあるんですか」
「ええ、どうして」
「じゃあ今みんなが見ているわけだな、あれは少しひどいと思うんだが、あなたは不愉快じゃないんですか」
「だって画じゃないの」
佐知子は窃むように笑った、「フランスではもっともっとひどいのが平気で展覧会に陳列してありますよ」
「いや、そういう意味でなく」
津川は佐知子の言葉の調子に慌てて相手を遮ったが、佐知子のほうは眼尻でちらちらと津川の表情をさぐりながら笑っていた。
話はそれ以上進まぬうちに、戻って来た八木たちのために途切れた。――津川は九時少しまえに別れを告げて立った、そして玄関へ出ると佐知子が、
「角までお送りいたしましょう」
と云って一緒に下りた。
ショオルを肩にひきしめた佐知子は、津川の側へひき添うようにして歩いた。冷え徹る夜ですでに凍り始めた道は、月の光を浴びて寒々と白く浮いて見えた。
「いつお帰りになるの」
「明日帰るつもりでいます」
「――そう」
彼女の声は反問の響をもっていたが、津川は気付かぬふうを装っていた。