Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せっしょうだにのおにび

殺生谷の鬼火

山本 周五郎

Lesen Sie 殺生谷の鬼火 (せっしょうだにのおにび) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.545 Zeichen · 19 Bildschirme

Aozora Bunko

危機一髪

「あっ――※(感嘆符二つ、1-8-75)」

敦夫は仰天して駈寄った、そして二本めの燐寸をすって覗きこんだ。

「矢張り、――母さんッ」

絶叫しながら敦夫は抱附いた。驚くべし、洞穴の奥に倒れていたのは、鬼火のために、殺生谷へ引込まれたと信じられていた敦夫たちの母親であった。

危機一髪

母親は後手に縛られていた、敦夫は手早く縄を切って抱起し、

「母さん、敦夫です、敦夫です」

と耳へ口を当てて呼んだ。母親はその声をようやく聞きつけたと見え、

「おお――」

と身を顫わしたが、

「は、早く、千代子を助けて、母さんは構わない千代子を助けて!」

ともつれる舌で叫ぶや、そのまま敦夫の腕の中へ気絶して了った。――敦夫には母の言葉が雷のように響いた。

「千代子、――そうだ、チイ公は吉井村の友達を訪ねて夕方帰ると云った、奴はその途中を、狙うに違いない、しまった!」

敦夫は臥破とはね起きるや、気絶している母を抱上げて洞穴を出る、もうあとは夢中で、蘆を踏倒し灌木を押分けて街道へ出た。――そこから二三丁西に小作人の村田与二郎の家がある。気絶した母を抱いたまま泥濘に何度も足を取られながら、ただ死力を尽して走りに走った敦夫は、ようやくの事で村田の家へ辿着くと、