Japanische Klassiker mit Furigana
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せっしょうだにのおにび
殺生谷の鬼火
山本 周五郎
Lesen Sie 殺生谷の鬼火 (せっしょうだにのおにび) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.545 Zeichen · 19 Bildschirme
古き呪い
敦夫は妹からも話を聞いた、そして平造老人の語るところと違はないのを慥めた。
「――土人の怨霊、奇怪な呻き、青白い大きな鬼火、……まるで中世紀の伝説だ、――その伝説のような現象が、実際に人を殺す……然も僕たちの母さんを殺した、――考えられない。実に考えられない怪事件だ」
「でもお兄さま、あの殺生谷の怨霊の声を聞けば、信じられない事も信じられるわ」
「チイ公もそれを聞いたのか」
「聞いたわ、二度も三度も、――お兄さまだっていまにお聞きになるわ」
そう云って千代子は身震いした。
父の壮太郎はよく眠っていて起きそうもなかったので、敦夫は旅の疲れもあり、寂しがる妹と一緒の部屋で早くから寝台へ入った。寝苦しいひと夜だった。とろとろとしたかと思うと直ぐに、何とも得態の知れぬ悪夢に襲われてはっと眼が覚める、そうすると今度は中々寝つかれず、殺生谷の鬼火が今にも其処へ現われるような気がしたり、怨霊の呻きが聞えるように思ったりして、窓がほのぼのと白んで来るまで、遂に敦夫は満足に眠らずにしまった。
古き呪い
夜が明けると雨だった。――軽く朝飯を済ましてから、敦夫は妹と一緒に父の病室へ入って行った。