Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

ぼしじょじょう

母子叙情

岡本 かの子

Lesen Sie 母子叙情 (ぼしじょじょう) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 77.355 Zeichen · 153 Bildschirme

Aozora Bunko

かの女は、一足さきに玄関まえの庭に出て、主人逸作の出て来るのを待ち受けていた。

夕食ごろから静まりかけていた春のならいの激しい風は、もうぴったり納まって、ところどころ屑や葉を吹き溜めた箇所だけに、狼藉の痕を残している。十坪程の表庭の草木は、硝子箱の中の標本のように、くっきり茎目立って、一きわ明るい日暮れ前の光線に、形を截り出されている。

「まるで真空のような夕方だ」

それは夜の九時過ぎまでも明るい欧洲の夏の夕暮に似ていると、かの女はあたりを珍しがりながら、見廻している。

逸作は、なかなか出て来ない。外套を着て、帽子を冠ってから、あらためて厠へ行き直したり、忘れた持物を探しはじめたりするのが、彼の癖である。

洋行中でも変りはなかった。また例のが始まったと、彼女は苦笑しながら、靴の踵の踏み加減を試すために、御影石の敷石の上に踵を立てて、こちこち表門の方へ、五六歩あゆみ寄った。

門扉は、閂がかけてある。そして、その閂の上までも一面に、蜘蛛手形に蔦の枝が匍っている。扉は全面に陰っているので、今までは判らなかったが、今かの女が近寄ってみると、ぽちぽちと紅色の新芽が、無数に蔦の蔓から生えていた。