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Japanische Klassiker mit Furigana

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ぼしじょじょう

母子叙情

岡本 かの子

Lesen Sie 母子叙情 (ぼしじょじょう) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 77.355 Zeichen · 153 Bildschirme

Aozora Bunko

かの女はその手紙に対してどういう返事を出して好いか判らなかった。何となく懐しいような、馬鹿らしいような、煩わしいような恥らわしい自己嫌悪にさえかかって、そのまま手紙を二三日放って置いた。

いくらか習わされた良家的の字には違いないが、生来の強い我が躾の外へはみ出していて、それが却って清新な怜悧さを表わしているといった字体で、それ以後五六本の手紙がかの女に来た。字劃や点を平気で増減していて、青年期へ入ったばかりの年齢の現代の若ものに有り勝ちな、漢字に対する無頓着さを現わしていたが、しかし、憐れに幼稚なところもあった。名前は春日規矩男と書いてあった。

書面の要求は初めの手紙と同じ意味へ、返事のないのに焦れた為か、もっと迫った気持の追加が出来て、銀座で接触したのを機縁として、唯むやみにもう一度かの女に会い度いという意慾の単独性が、露骨に現われて来ていた。

文筆を執ることを職業として、しじゅう名前を活字で世間へ曝らしているかの女は、よくいろいろな男女から面会請求の手紙を受取る。それ等を一々気にしていては切りがない――と、かの女は狡く気持の逃避を保っていた。