Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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けのゆびわ

毛の指環

宮本 百合子

Lesen Sie 毛の指環 (けのゆびわ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.492 Zeichen · 9 Bildschirme

Aozora Bunko

紐は帯留めのお下りであった。あの帯留は母が買って来た。「まあこんな廉いものがあるんだね」そう云って由子の前へ出して見せた。「するのならあげよう」由子が平常にしめているうちに、真中に嵌っていた練物の珠みたいなものが落っこちてしまった。珠みたいなものは薄紅色をしていた。……

由子は、今も鮮やかにぽっくり珠の落ちた後の台の形を目に泛べることが出来た。楕円形の珠なりにぎざぎざした台の手が出ているのが、急に支える何ものも無くなった。それでもぎざぎざは頑固にぎざぎざしている。掴んでいるのは空だ。空っぽの囲りで、堅い金具が猶もそのような恰好をしているのを見るのは厭な気持であった。

それで自分は前かけの紐にしてしまったのだ。

ふっと、由子は心の隅に、更にもう一つの紅い玉を思い泛べた。帯留の練物のような薄紅色ではない。その玉は所謂紅玉色で、硝子で薔薇カットが施こされていて、直径五分ばかりのものだ。紅玉色の硝子は、濃い黒い束ね髪の上にあった。髪の下に、生え際のすんなりした低い額と、心持受け口の唇とがある。納戸の着物を着た肩があって、そこには肩あげがある。

目で見る現在の景色と断れ断れな過去の印象のジグザグが、すーっとレンズが過去に向って縮むにつれ、由子の心の中で統一した。