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Japanische Klassiker mit Furigana

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みずがめ

水甕

豊島 与志雄

Lesen Sie 水甕 (みずがめ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.082 Zeichen · 26 Bildschirme

Aozora Bunko

人々の怪しみ驚くのもかまわず、人込みの中を押し分けて、舞台のまわりを歩きました。まもなく、ふしぎにも、人垣の抵抗が感ぜられなくなりました。彼の身体はその群衆の中を、水をでも押し分けるように容易く、通りぬけてゆきました。どこにも、殆んど抵抗がありませんでした。

それならば……と仁木は両腕を組んで考えこみました。と同時に、危惧の感が起ってきました。これからどんなことをするか分りかねました。その辺の人々を踏み潰すかも分りませんでした。そういうことが起らないとは保証出来ませんでした。新たな深淵を覗きこむような怖れと寂寥が襲ってきました。

彼は真直に歩いてゆきました。焼け跡に出ました。そしてなお歩き続けながら、このままでは済むまいと思い、一種の戦慄に似た眩暈を感じました。

路傍に仄白い石がありました。彼はそこに腰を下して、煙草を吸いました。傍には丈高い雑草が繁茂していました。青臭い匂い、辛い匂い、薄荷めいた匂い、それらが一緒になって、彼を誘いました。彼は野獣のように茂みの中にころげこみました。

時がたちました。仁木は何かの気配に、むっくり身を起し、びっくりしたように突っ立ちました。