Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こおりぐらのにかい

氷蔵の二階

宮本 百合子

Lesen Sie 氷蔵の二階 (こおりぐらのにかい) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.201 Zeichen · 37 Bildschirme

Aozora Bunko

「なあに――忘れもの?」

「あなた小銭もってない? いくらでもいいのよ、一日かして」

「あの人持ってないの」

「うん、困っちゃう。――持ってるだろうと思ったら、空々なんだもの――」

房は、六十銭渡した。

目白の方に、いよいよ家が見つかった。志野は帰ると、眠るまでその家のことを喋り通した。

「ね、嘘だと思ったら行って御覧なさい、全くいいったらないのよ、駅から直きだし、日当りはいいし、新しいし。三軒建った真中だから要心も大丈夫なの――あなた、本当にいらっしゃい、ここなんかと空気は比べもんにならないわ」

「――有難う――でも私やめるわ」

「何故? 折角三人で賑やかに暮そうと思ってるのに――部屋だって、ちゃんとあなたの分があるのにさ」

「まあ二人だけで暮す方がいいわよ」

「――詰んないわ、それじゃ」

志野の引越の日、房は須田に行っていた。志野のために、結局利用されたようなところも決してなくはないのに、別れるとなると房は辛かった。荷物の出てゆくのを見る気がしなかった。

「じゃあ、大垣さんによろしくね、私、温泉へ行ったら手紙出すわ」

「きっとね。私も明日すぐちゃんとした所書をあげるから、帰って気が向いたら、家へ来て頂戴」