Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
長年の定宿だ。まかり間違ったところで私の方の損とあきらめれば済む。今のお前さんには大事の金だ。むやみに遣わせちゃあならない」
「これもみんな旦那さまから貰った金で、つまり旦那さまの物を預かっているも同様でごぜえます。こういう時の用にと思って、去年お暇の出るときに貰った十両はちゃんと手をつけずにあります。どうぞ受取って置いて下せえまし」と、治六の方でも押し返した。
亭主の眼からは涙がこぼれた。お前さんの志はよく判っているが、どうもこの金をお前さんから受取るわけには行かない。旦那がああいう始末になっては、お前さんももう帰参の見込みもあるまい。その十両を元手にして何か自分の身を立てる工夫を付けた方がよかろうと、亭主は親切に意見すると、治六はときどきに眼を拭きながらおとなしく聴いていた。そうして、久し振りで旦那さまに逢って来たいと言った。
「どうでいい顔もしなさるまいが、逢いたければちょいと顔を出して来なさるがいい」と、亭主は言った。
治六はそっと二階へあがって行くと、もうやがて八つ(午後二時)というのに次郎左衛門は衾をすっぽりと引っかぶっていた。障子の外から声をかけて、治六は這うように座敷へいざってはいると、次郎左衛門は薄く眼をあいていた。