Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
呪われたる人の多い世ではあるが、遊女にはこの二つの危険が比較的に多かった。取り分けて遊女屋の主人に禍いするのは、廓に最も多い心中沙汰であった。恋にとけあった男と女とのたましいが、なにかの邪魔を突き破って無理に一つに寄り合おうとすれば、人間を離れたよその世界へ行くよりほかなかった。
法律の力で心中の名を相対死と呼び替えても、人間の情を焼き尽くさない限りは何の防ぎにもならなかった。吉原で心中を仕損じた者は、日本橋へ三日晒した上で非人の手下へ引き渡すと定めても、それは何のおどしにもならなかった。心中のなきがらは赤裸にして手足を縛って、荒菰に巻いて浄閑寺へ投げ込むという犬猫以上の怖ろしい仕置きを加えても、それはいわゆる「亡八の者」の残酷を証明するに過ぎなかった。情に生きて情に死ぬ男と女とは、切支丹の殉教者と同じ勇気と満足とをもって、この迫害の前に笑って立った。
遊女屋の座敷で心中した者があると、主人はその遊女一人を失ったばかりでない、検視の費用、その座敷の改築などに、おびただしい損害と迷惑とを引き受けなければならないので、彼らは心中を毒蛇よりも恐れた。大菱屋の亭主も自分の抱え遊女のうちから剣難の相があるという綾衣を見いだした時に、彼は未来の恐るべき禍いを想像するに堪えなかった。