Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
「あたしはもういいんだよ」
「でも、こんなに癇がたっていて、どんなことがあるかも知れませんもの。姐さん、ほんとうにからだを大事にしてくださいよ」
「いいよ、判っているよ」と、お絹は邪慳に叱りつけた。
叱られてもお君はまだそこにしょんぼりと坐っていた。露地のなかで犬の声がきこえたので、もしや林之助がまた引っ返して来たのではないかと、お君はそっと起って行って雨戸の外に耳を澄ましたが、犬の声はしだいに遠くなって、溝板の上には誰も忍んでいるような気配もきこえなかった。
「誰か来たの」と、お絹は急に顔をあげた。
「いいえ」と、お君は枕もとへそろそろとまた戻って来た。
「お前、いい加減にしてお寝よ」
「ええ」と、お君はまだ渋っていた。
「言うことを聞かないと承知しないよ」
枕をつかんで叩き付けそうな権幕をみせても、お君はまだ強情に動かなかった。黙って坐っている彼女の小さい眼からは白いしずくがほろほろと流れていた。それを見ると、お絹は急に堪まらなくなったように、蒲団の上から滑り出してお君のからだを横抱きにしっかりと抱えた。
「君ちゃん、堪忍しておくれよ。あたし、この頃は時どきに癇が起るんだからね。