Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
半九郎は暗い顔をして聴いていたが、やがて思い切って言った。
「よい。判った。心配するには及ばぬ。あしたからは夜も昼もおれが揚げ詰めにして、ほかの客の座敷へは出すまい」
「ありがとうござります」と、お染は手をあわせて拝んだ。
江戸の侍に嘘はなかった。半九郎はあくる日からお染を揚げ詰めにして、自分ひとりのものにしてしまった。店出しの初めから仕合せな客を取り当てたと、若松屋の主人も喜んだ。お雪も喜んだ。朋輩たちも羨んだ。
坂田市之助も花菱へたびたび遊びに来た。しかし彼はお花のほかにも幾人かの馴染みの女をもっているらしく、方々の揚屋を浮かれ歩いていた。
「わたしの人にくらべると、半さまは情愛のふかい、正直一方のお人、お前と二人が睦まじい様子を見せられると、妬ましいほどに羨まれる」と、お花は折りおりにお染をなぶった。なぶられて、お染はいつもあどけない顔を真紅に染めていた。
半月あまりは夢のようにたった。十三夜は月が冴えていた。半九郎は五条に近い宿を出て、いつものように祇園へ足を向けてゆくと、昼のように明るい路端で一人の若侍に逢った。
「半九郎どのか」
「源三郎、どこへゆく」