Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
次郎左衛門は杯をおいて、凄い眼でじっとこっちを睨み詰めているので、栄之丞は中途で臆病らしく口をつぐんだ。
「やかましい」と、次郎左衛門はだしぬけに呶鳴り付けた。「卑怯だから卑怯だと言ったのがどうした。やい、生けしゃあしゃあとした面をするな。この間の晩、大音寺前から次郎左衛門のあとを付けて来たのは誰だ。うしろから抜き身を振り廻しゃあがったのは何処のどいつだ。すぐに引っ返して行って踏み殺してやろうと思ったが、きょうまで命を助けて置いてやったのだ。さあ、次郎左衛門に意趣遺恨があるなら、まともに向いてかかって来い」
その権幕が余りに烈しいので、栄之丞は煙にまかれた。彼の言うことは何が何だかちっとも判らなかった。栄之丞は呆気に取られて弁解をするすべもなかった。
「全体おもしろくもねえ野郎だと思ったが、おとなしいのを取得に今まで可愛がって置いてやったのだ。それになんだ、柄にもねえ光る物なんぞを振り廻しゃあがって……。この次郎左衛門はこれまでに幾たびとなく血の雨を浴びて来た男だ。貴様たちの鈍刀がなんだ、白痴が秋刀魚を振り廻すような真似をしやあがったって、びくともするんじゃあねえぞ。