Japanische Klassiker mit Furigana
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きてき
汽笛
佐左木 俊郎
Lesen Sie 汽笛 (きてき) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.469 Zeichen · 10 Bildschirme
「どうだ。あの煙は? この町は空気が悪いんだね」
貞吉と秋子とは視線を揃えて工場の煙突から立ちのぼる黒煙に向けた。
「どうかして転地でもしなければいけないね。秋ちゃんの家から半分出してくれないかな。そしてどこか空気のいい海岸へでも転地していれば……」
「まだ結婚さえ許してくれないのですもの。それよりも、お父さんが私達の結婚を許して下さるといいと思うわ。そしたら、私、死んでもいいわ。私もうそれだけよ」
「馬鹿な。僕が困るじゃないか。近ごろ少し肥ったじゃない? どれ手を……」
貞吉は秋子の手を自分の膝の上に取った。
「肥るわけないじゃないの」
汽笛が高らかに響き渡った。獣類の吼えるように、唸るような余韻を引いて、そして機関車はもくもくと黒煙をあげながら麦畑の中を堤の上を突進して来た。
「あら! あの機関車は、お父さんが乗っているのよ」
秋子は堤草に身体をすりつけるようにして小さくなり顔を伏せるのだった。貞吉はあわてて彼女の手を解いた。直通列車が凄まじい速力で囂々と二人の頭の上を過ぎて行った。
「どうして判る?」
「だって、あの汽笛は、お父さんの鳴らす汽笛なんだもの、そりゃ直ぐ判るわ」